大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

和歌山地方裁判所妙寺支部 昭和41年(わ)22号 判決 1967年9月13日

主文

被告人を罰金五万円に処する。

右罰金を完納できないときは、五〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は自動車運転を業とする者であるが、昭和四一年五月二六日午前一一時ごろ、普通貨物自動車を運転して国道二四号線を西進し、和歌山県伊都郡かつらぎ町妙寺三七五番地野口食堂前の交差点において左折南進しようとし、同交差点の約三〇メートル手前から左折の合図をなして徐行をはじめ、左折しようとする町道の幅員が狭く、かつ鋭角であるため、法定されたようにあらかじめできる限り道路の左側に寄つて進行し左折することが困難なので道路左側部分の中央寄りを進行し、赤信号によつて交差点の手前でいつたん停止したのであるが、このような場合自動車運転者としては、前方の信号が青になつたとき、後続する車輛の運転者が被告人の方で直進車に進路をゆずるものと判断して被告人運転の自動車の左側を追い抜いていくことも十分考えられるのであるから、後続車の有無を十分にたしかめ、後続車が接近しているときはこれを先行せしめ、後方の安全を確かめてから左折し、事故を未然に防止すべき業務上の注意義務があるのに、これを怠り、前方の信号が青になるや後射鏡を一べつしたのみで後方確認不十分のまま左折南進をはじめた過失により、被告人運転の自動車の左後方を西進していた古川勝敏(当時一七才)運転の自動二輪車の前部を自車左前部に接触させ、運転の自由を失つた右自動二輪車を交差点南西角の海瀬時計店前まで暴走させて転倒させ、よつて同人をして脳内出血、左第九、一〇、一一肋骨々折等の傷害を負わせ、右傷害により同月二七日の夕方同町妙寺二一九番地和歌山県立医科大学附属病院紀北分院において死亡させたものである。

(証拠の標目)(省略)

(法令の適用)

被告人の判示行為は刑法二一一条前段、罰金等臨時措置法三条に当るが、過失の内容その他諸般の事情を考慮して罰金刑を選択し、被告人を罰金五万円に処し、換刑処分について刑法一八条、訴訟費用の負担について刑事訴訟法一八一条一項本文を適用して主文のとおり判決する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例